アメ株クラブ

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【投資戦略】長期投資家になるために必要なこと(コミットメントデバイス)

ホメーロスオデュッセイアでは、ユリシーズと船員たちは航海中にセイレーンたちを通過しなければならない状況になる。セイレーンは妙な魅力があり、誘惑的な歌を歌いながら、歌を聴いた人々を死なせる。
ユリシーズはセイレーンの歌を聴いても生き残るため、行動科学を利用した。彼は未来の自分自身を守るために、今の自分にコミットメントデバイスを設けた。(コミットメントデバイス:目標を達成するため、良い行動はできるように、悪い行動はできないように行動を制約する仕組み)
彼は船員たちが誘惑に落ちないように耳を塞ぎ、自分自身は動けないように体を船に縛った。
投資家が長期投資の恩恵を受けるためには、ユリシーズのような方法を使う必要がある。

 

 

スティーブン・ピンカーは、新作「Rationality」でこれらの行動管理について書いている。ユリシーズは行動できる能力を放棄し、船員にその選択を知らせた。

彼の行動が不自然な理由は、意図的に影響力と主体性を放棄することは理性的に見えないからである。しかし、私たちがこの先の障害物や制約について知っていれば、目標を達成する最も合理的なアプローチになるかもしれない。
投資家として、私たちはユリシーズと同じような状況であることに気づく瞬間がある。私たちは長期的な目標を達成するためには行動を減らさなければならないという事実を知っている。しかし、株市場からの絶え間ない騒音(ニュースなど)は、私たちが不適切な行動をするように誘惑する。
行動しない長期投資家になるということは、非常に簡単に思えるが、最も難しい。どう
すれば、ユリシーズのように未来の私から自分自身を守れるだろう?ユリシーズの船員のように耳を塞げば、株市場のカオス的な動きと予測不可能な経済状況を無視できる。ポートフォリオをあまり確認せず、株ニュースを見ない。計画から遠ざけるようなことは避ける。
自分を船に縛っておくことは、「行動しない」よりも行動をはるかに制限しておくという意味である。パスワードを変更して忘れるなどいくつか追加装置を置いて投資決定プロセスを遅らせることである。
もちろん、私たちはこのようなことは全くしない。「重要」情報を無視し、自分で「必須」投資判断をできなくすることが不合理的に感じるからだ。また、私たちは将来の自分自身が非合理的な判断をするとは思っていない。自分は周りの環境に振り回されることなく理性的に行動すると信じている。
投資で良い成果を得るために正しいコミットメントデバイスを設けることがむしろ非理性的で軽率に見えるかもしれない。「昨日の株市場がどうだったか分からないし、どうだってあまり気にしない」と思うことが、長期的に良い成果を達成する可能性を高めてくれるが、人々はこれを無能だと思ってしまう。
当然ながら専門投資家はこのようなユリシーズ契約を嫌う。彼らは市場に参加して行動することで報酬が発生する。その行動が有意義かどうかは関係ない。彼らはセイレーンの歌を聴くべきであり、メロディーを楽しみながら障害物を避けられると信じているだろう。
しかし、コミットメントデバイスが完全な制約である必要はない。未来の自分自身がその時に訪れたチャンスをより活用できるように設計することもできる。また、バリュエーションが極端なレベルに達したときのみ行動を起こすように、コミットメントデバイスを設定することもできる。
このアプローチは不完全ではある。時が来たとき、まだ自分で決定し、行動しなければならないからだ(そして、その時には今は良い考えではないかもしれないという言い訳を作ってしまう)。しかし、行動するかどうかに対する明確な基準を定めておけば、少なくとも騒音によって誤って判断し、売買しすぎることは防げる。
行動を管理する上で重要な部分は、今後直面する問題を理解し、緩和する方法を事前に考えておくことである。
良い投資とはスタート時点で合理的な判断をし、道のりで誤った決定を避けることである。問題は道のりから抜け出したい思いが圧倒的に強くなる可能性が高いことだ。私たちのほとんどは長期投資家になることを望んでいるが、最初に正しい行動規約を定めていない限り、金融市場で響き渡るセイレーンの歌声がそれを不可能にしてしまうだろう。

出典: Long-Term Investors Must Make a Ulysses Pact | Behavioural Investment

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