SPAC株であるIPOEはフィンテック企業ソーファイ(Sofi)と合併することを発表している。手続きは2021年度の第1四半期中に完了を目指している。
IPOEについて
IPOEはソーシャルキャピタル社が手掛けるSPAC株である。ソーシャルキャピタルの創業者兼CEOであるチャマス・パリハピティヤ(Chamath Palihapitiya)は次世代のウォーレン・バフェットとも呼ばれており、元フェイスブックの副社長でもある。ソーシャルキャピタル社はベンチャーキャピタル企業でslackやyammer、Boxなどに出資してきた。SPAC株にも積極的で、昨年IPOAはヴァージン・ギャラクティック(SPCE)、IPOBはオープンドア(OPEN)と合併に成功して注目されている。
ソーファイの企業概要
IPOEと合併により上場することになったソーファイは金融関連の様々なサービスを提供するアメリカのフィンテックスタートアップ企業である。社名は「ソーシャルファイナンス」の略語であり、人と人をつなぐ社会的な金融サービスを提供することを目指すと説明している。一つのアプリケーション内ですべての金融サービスを提供しているため、若い世代を中心に使用者が増えて大きく成長している。
ソーファイのコアビジョンは「人々の財務的な独立に対する社会的な支援」としている。要するに、顧客がライフサイクルによって必要なお金をソーファイから借りられるシステムを構築することがビジネスの目的である。当社は2011年にスタンフォードのMBAに在学中だったマイク・キャグニー(Mike Cagney)が同級生3名と設立した。最初はスタンフォード卒業生から投資金を集めて、在学生に貸すといったP2P金融ビジネスからスタートした。その後、スタンフォード以外の大学生へ対象を広げ、サービスとしても学資ローン意外に住宅ローンや個人ローン等へ事業分野を広げている。
学資ローン市場でP2Pビジネス
設立当初のアメリカの学資ローン市場は1兆5000億ドル規模だった。学生たちは政府や既存の金融機関から学費を借りられたが、面倒な手続きと高い金利によって大学生たちは卒業と同時に莫大なローンを抱えて社会人になるしかなかった。創業者であるキャグニーはウェルズ・ファーゴでキャリアを積んでヘッジファンドを創業したこともあったたため、この問題を少し異なるアイデアで解決しようとした。スタンフォードのような優秀な大学の卒業生は将来ローンを返す能力が十分であるという発想から、スタンフォード卒業生40名から5万ドルずつ集めて200万ドルを元金として事業を始めた。このお金でスタンフォードMBA在学生100人に学資ローンを貸してあげた。当時の政府から借りる学資ローンの金利は7.9%水準だったが、キャグニーは5.99%で2%ほど安い金利で貸してあげた。それだけではなく、ローンを借りた在学生たちの就職支援などのメントリングも行うことで、社会的な評判も高くなった。
P2Pローンから金融ビジネスへ
2014年には学資ローンのみだったビジネスモデルから事業を拡張した。ピーターティール(ペイパール創業者)から8000万ドルを投資してもらい、住宅ローン市場に参入した。また、ソーファイから学資ローンを借りた人が就職したり、国家資格を取得すれば金利を下げるか返済期間を再調整できるようなプランを導入した。また、2016年からは法人向けにソーファイアットワーク(SoFi at work)サービスをリリースした。サービスを導入した会社の従業員が残っている学資ローンの金利をより下げられるように支援するプランである。
現在のビジネスモデル
現在、ソーファイの主なサービスは以下の5つの分野である。
- ローン
- 投資
- 消費
- 保険
- 企業金融ソリューション
ローン
企業を始めたきっかけでもあり、主なビジネス分野である。学生対象に学資ローンサービスを行っており、個人ローンと住宅ローンも始めている。
投資(金融サービス)
ソーファイのアプリケーションで株とETFの売買ができ、仮想通貨の売買できるようになった。また、退職金の口座の管理もできる。
消費
最近クレジットカードもリリースしており、高いキャッシュバックと低い年利率で強みがあり、直近で使用者が大きく増えている。また、デビットカードや口座の入出金サービスを提供する「ソーファイマネー」も提供している。
保険
自動車保険や生命保険、火災保険等幅広くサービスを提供しており、アメリカのスタートアップ保険会社であるレモネードとパートナシップを結んで低い金額でミレニアル世代を中心に加入者を増やしている。
企業金融ソリューション(ソーファイアットワーク)
企業側が従業員を対象とした金融福利厚生を提供できるようにするビジネスである。まだ、規模は少ないが今後に向けて取り組んでいるビジネスモデルである。
ソーファイの強みは、上記に述べたサービスを一つのフラットフォーム内で利用できることである。このすべてのサービスは「ソーファイメンバーズ」というものとして提供している。一つのアプリケーションで様々な金融サービスが利用できるため、顧客の忠誠度が高い。
そして、フィンテック関連スタートアップ企業の中でもっとも多い金額の投資されている。主に、ソフトバンク、ピーターティール、カタール投資庁から25億ドル以上投資されている。
顧客数の成長率も高くて現在172万人の会員がおり、21年度には300万人を超える見込みである。主なターゲット顧客は高学歴&高所得層であることは強みである。
まだ売上のほとんどがローンサービスに偏っていることは今後の課題である。現在、金融サービス部門を成長させていく予定で、アメリカ政府に銀行ライセンスを申請している。承認されれば金融サービス部門で提供できるサービスのバリエーションも増えてさらなる成長が期待できる。ただし、承認されない可能性もあり、その場合は株価にも悪影響を与えるかもしれない。
当社の発表によると、2020年の売上は6億2000万ドルで6.6千万ドルの赤字である。2021年に黒字転換が予想されており、2025年には売上が36億ドルで11億ドルの黒字になる見込みである。