ピーター・リンチ:投資成功のための10の原則
ピーター・リンチは1980年代にフィデリティ・インベストメンツのマゼラン・ファンドのファンドマネージャーとして活躍した伝説的な投資家です。彼は10年以上にわたり市場を打ち負かし、驚異的な複利年率29%を生み出しました。
1997年のスピーチで、リンチは25年間のキャリアを通じて学んだ成功した投資哲学の主要な原則をまとめました。リンチはこれらの原則が当時も今もそして25年後も真実であると述べました。したがって、この記事では、この象徴的なスピーチを投資成功の10の原則にまとめました。
1. 所有するものを理解する
多くの人が株式を所有していますが、なぜそれを所有しているのか本当に理解していない場合があります。リンチは、「11歳の子供に2分以内で説明できないのであれば、その株を所有すべきではない」と提案します。
株式の背後にあるビジネスを理解することが、株式市場への投資の最も重要な原則です。これがウォーレン・バフェット(取引、ポートフォリオ)が理解できる範囲のものにしか投資しない理由です。リンチは、「ダンキン・ドーナツ(NASDAQ:DNKN)、ストップアンドショップなどのものを買って利益を出した」と語っています。
2. 経済を予測しようとしない
リンチはボトムアップの投資家であり、企業や業界の分析を通じて個々の株式に投資します。マクロ経済の投資家は、金利変動や経済などを根拠にベットをすることがあります。しかし、リンチは「金利や経済を予測しようとするのは無駄だ...経済に1年間13分しか使わなくても、10分は無駄になる」と信じています。
これは、別の投資家であるハワード・マークス(取引、ポートフォリオ)の哲学と非常によく似ています。彼もマクロ経済の予測には信じないとしています。
3. 忍耐強くあること
投資する際、人々は今すぐ買わなければ取り逃がしてしまうと考えることがよくありますが、リンチは投資は長期的なゲームであるため、「ウォルマート(NYSE:WMT)を公開後10年経ってからでも、まだ資産の30倍以上の利益を出すことができる」と強調します。
1970年にウォルマートが公開された10年後、全米における店舗の普及率はわずか15%でした。したがって、同社は全国展開のための十分な余地があると考えられますが、成功が保証されたわけではないため、一部の投資家はもうすでに遅れてしまったと思っていたかもしれません。
4. 優れた株はどこにでもある
リンチは特定の株式や産業への偏見を避けることを信じています。「優れた株はどこにでもある」と、倒産寸前の株でもそうです。しばしば、優れた投資は他の誰もが狂ったと思うようなところにあります。
5. 株を売るタイミング
リンチは株を買った理由を書き留め、そしてその理由がその会社にとってもはや真実ではない場合に売却を検討するべきだと提案しています。ストーリーが変わると、投資テーゼも変わるのです。
6. 株価は常に下がる可能性がある
リンチが強調する重要なポイントは、株価が大幅に下がったからといって、それ以上下がらないという保証はないということです。株価は常に下がる可能性があるのです。ポラロイドは140ドルから107ドルに下落し、人々は100ドル以下なら買えと言いましたが、9ヶ月後には株価は18ドルになっていました。株価が下がったからといって、必ずしも回復する必要はありません。
7. 株価は常に上がる可能性がある
株価が上昇した場合、特に収益に裏付けられていない高騰株の場合、投資家はこれ以上上がる余地がないと考えるかもしれません。しかし、ビジネスの基本が素晴らしい場合、売上や利益が拡大している場合、株価はまだ上昇し続ける可能性があります。市場の短期的な動きはしばしば感情によって引き起こされるものであり、現実とは異なる場合があります。株価が上がった事実自体は売却の理由にはなりませんが、過大評価された株にはリスクがあることを忘れないようにしてください。
8. 株価の下落はあなたが間違っているという意味ではない
株価の短期的な動きは、あなたが正しいか間違っているかを決定するものではありません。投資の成功は初期の結果だけで判断されるものではありません。例えば、目を閉じてランダムに株を選んで10倍になった場合、他の人はそれを成功とするかもしれませんが、それはあなたが正しいという意味ではありません。逆に、株を徹底的に分析して購入し、株価が下がった場合でも、これは短期的な市場の変動にすぎないかもしれませんし、最初は損失に見えるかもしれません。
9. 投資したものを失う可能性がある
投資する際には、株が安くても投資したものを失う可能性があることを多くの人が忘れがちです。1株3ドルなら、いくら失うことができると思いますか?リンチは聴衆に尋ねました。「1株3ドルで株を25000ドル、隣人が1株50ドルで株を10000ドル購入した場合、株がゼロになれば、両者とも全てを失います。
10. 最も多くの可能性を探求する者が勝つ
リンチは、「10社を見れば、1社は評価が間違っている」と言っています。20社を見れば、2社見つかるかもしれません。最も多くの可能性を探求する者が勝つのです。
ピーター・リンチは伝説的な投資家であり、その投資原則は今日でも変わることはありません。リンチの哲学は常識的で合理的な投資に焦点を当てています。シンプルに思えるかもしれませんが、これらの原則を長期的に実践することは難しいものです。リンチの言葉を読むことで、投資はスプリントではなくマラソンであることを思い出し、適切な遠近法を持つことができるでしょう。
参考:
私たちが長期投資をしない(できない)50の理由
投資は、長期的な(財務的な)目標を達成するための長い取り組みである。
しかし、私たちは短期的なことに執着し、自分にとって良くない判断をするために時間を費やし、悪い判断をしてしまうだろうか。
その50の理由:
- つまらないから
- 市場はランダム的な動きを、理解するのが難しいため
- 短期的なベンチマーク(指数)と比べてしまうため
- 年間収益率で評価されてしまうから
- 四半期ごとのリスクとパフォーマンスを評価するから
- 誰かが自分より儲かっているから
- 経済/金融ニュースを見てしまうから
- 市場サイクルのタイミングを掴められると思うから
- 長期投資したからって良い結果にならない可能性があるから
- 運用するファンドが成功報酬を請求してくるから
- 損失が発生するとつらいから
- 福利効果という言葉を忘れてしまったから
- 今起こっていることに気を取られてしまうから
- 未来の価値を現在の価値で換算することが難しいから
- 3 年後には別の仕事をしているかもしれないから
- 最近の流れが今後も続くと思うから
- 毎日自分のポートフォリオを確認するから
- ポートフォリオを簡単に変えられるから
- 短期的な結果が悪いということは、何かが間違っているかもしれないから
- 感情的な投資決断をしているから
- 市場の状況を予測可能だと考えているから
- 経済状況に応じて市場がどのように反応するか分かっているから
- 収益率の比較対象が誤っているから
- 何もしないと不安だから
- 規制によって10%下落する度に報告しなければならないから報告を減らすため
- 上昇している株を保有する方がいい気分になれるから
- 情報が多すぎるから
- 本当に重要な情報が何か分からないから
- 職場を失いたくないから
- 誰もそうしないから
- 自分の存在意義を正当化しなければならないから
- 自分は投資が(実際より)上手だと思っているから
- 上場企業で働いているから
- 顧客を失いたくないから
- 1年は長期だと思っているから
- 長期的に収益性が高い資産は短期的には良くないパターンが多いから
- 毎年、一貫性ある収益を得られると思うから
- 長期的に「誤った投資」をしたくないから
- 最近の流行りに遅れたくないから
- 新しい考え方、投資トピックができるから
- 過去にも短期的な正しい判断で儲かったから
- 顧客や他の人が見た時、何かやっていると思わせないといけないから
- 自分は他の人より賢いと思うから
- 売買手数料を正当化させなければならないから
- 弱気相場なのに投資したくないから
- ニュースをみる度に、長期的な利益と関連するように思うから
- 短期トレーディンも刺激があって楽しいから
- 自分だけの意見を持ってなければならないから
- 投資の専門家がたくさんいて、みんな説得力ある意見を出すから
- 単純すぎるから
長期的なスタンスを追求することは、投資において優位に立てる数少ない方法である。
残念ながら、長期投資をしている過程の中で、都度都度自分が逆走しているように見える場合もある。
しかし、その道は決して誤っていない。
出典:50 Reasons Why We Don’t Invest for the Long-Term | Behavioural Investment
「下値で拾う」ことは戦略じゃない!
下値で拾う(buy the dip、下値拾い)とは、高値から最近の平均値より大きく下落した時など、ある基準を定めておき、その条件に合う株を買うことである。
株価が下落したときに買うことで、言葉だけだと賢く成功しやすい戦略に見える。
株を安く買うことを好まない投資家はない。しかし罠がある。
「下値拾い」戦略は、今後のマーケットが上昇するという前提条件がある。
この戦略は、株価が上昇傾向であり、さらに上昇する前に調整が入ったときに人気がある戦略だ。
Googleトレンドによると、直近5年間で関連検索が確実に増加した。
非常に長い強気相場を続けており、投資家が大きな自信を持っているとき、このような戦略が流行ることは偶然じゃない。
そして、投資に対して、過信することがどんな結果になるかは言うまでもない。
投資戦略には簡単な原則に従う必要がある。
単純に過去に効果があって、今でも有効な戦略が望ましい。
数十冊の投資書籍を読んでも、「下値で拾う」ことを投資戦略として定義していない。
このような戦略はYouTubeやネット掲示板で有効なアイデアである。
この戦略の根本的に間違っている。
投資において、株を買うと判断する時に、株価は最後に考慮すべき要因である。
だが、「下値で拾う」戦略は最初に株価にフォーカスしている。
企業に投資判断をするためには、まず、ファンダメンタルを基準に該当企業が「投資可能」かどうかを調べてから、「いま」良い投資対象であるかを調べなければならない。
優良企業であれば投資は可能ではあるが、株価が適正価値より高ければ良い投資対象ではない。
「下値で拾う」というのは、短期的な人間の心理による株価の変動に基づくものだ。
そしてその行為は投資ではなくギャンブルに近い。
株価が下落したら、「なぜ下落したか」、そして「下落が正当なのか」を把握しなければならない。
経営陣がガイダンスを下げているか。
企業の売上や利益に影響する法律改正が行われたか?
それとも、アナリストが自分の顧客のために安く購入するために、変な噂を流しているか?
株価下落の理由と正当性を知ってこそ、正しく判断することができる。
2010年以降に投資を始めた投資家は、株価がどこまで落ちるか分からないだろう。
そして20%の下落がかなり大きいと思う傾向がある。
株価が安いという理由だけで株を購入することは落ちてくるナイフを掴もうとする危険なことである。
youtuberたちがこのような戦略を広げる理由は、視聴者が比較的に若くて投資歴が浅いから説得されるからだ。
下値で拾うことは、どこが下値であるか知っていたら効果がある
そのため、ファンダメンタルに基づいて投資し、自分なりに調査を行うことが常に重要である。
会社がまだ(資本的に)健全な状態にあるかどうかを確認することは、強力な「下値で拾う」戦略になる。
投資家がどの下値を狙い、いつ購入するかを正しく判断できれば、株価の急激な下落は投資チャンスとなる。
1 つの指標だけで投資決定を行うのではなく、「下値で拾う」こともこのルールの例外ではないことを忘れてはいけない。
その上、機会費用も高い。
大きな暴落が来たら投資をするために現金を待っていると言う人々も多い。
そのような人たちは気に入った株が上昇している時に、投資せず現金化している。
その間、株主は配当金を受け取り、資産が増やしている。
その大暴落を待っている人達はただの傍観者である。
そして、いざ市場が暴落すると、まだ暴落は続くと考えて動けない。
数か月後に新たな上昇トレンドが始まっていることに気づき、再び「下落」することを待ちます。
投資する完璧なタイミングを待つことより、良い企業を探さなければならない。
「下値で拾う」のもう一つの問題は、投資家に簡単に儲かる近道に誘うことである。 特にインデックスファンドに関しては、このような戦略が簡単であるため、不真面目な投資家にとっては良い解決策に見える。
しかし残念ながら、ほとんどの人は不真面目な人なので、努力せず儲かる方法を好む。
要するに、
下値で拾うことは企業の価値に対する投資ではない。
ただの株価だけでする判断にすぎない。
投資というのは価値があると判断できるときに買わなければならない。
毎回、下値で拾える可能性は低い。
出典:"Buy the dip" is not a strategy. - The Onveston Letter