2020年の記録的なSPAC上場、SPACとは何か?
出典:What are SPACs: 2020 saw record number of shell companies listed
ポイント
- SPACは本質的に「シェルカンパニー」であり、実際の企業活動はないが、既存の企業を買収するための資金調達のため設立されており、従来のIPOのプロセスを簡略化できる。
- SPACには投資家がアクセスできる運用や財務に関わるデータがないため、その実績は管理チームの評判に依存する。
- リフィニティブ(Refinitiv)によると、2020年1月から10月までに165個のSPAC IPOがあり、2019年のほぼ2倍、2015年の5倍である。
2020年一年間、企業買収目的会社(SPAC)は記録的な上場件数を達成したが、これらの「シェルカンパニー(shell company)」は、最近発明された物ではない。
金融情報提供企業であるリフィニティブ(Refinitiv)によると、2020年1月から10月までの約165個のSPACが上場された。 これは2019年のほぼ2倍で2015年より5倍高い数値だ。
上場する方法としてSPACが、起業家、ヘッジファンドマネージャー、スポーツ球団のオーナーたちからますます人気を集めている。
SPACとは?
SPACは本質的に資産や事業活動がない名義のみの会社を言う「シェルカンパニー」であるが、IPO(株式上場公募)を介して資本を調達した後、既存の非上場企業を買収することを目的として設立される。
SPACはIPOを通じて投資家に株式(一般的に10ドル)または後日固定価格で株式を購入できるワラントを販売する。
一度、資金が調達されると、二つのいずれかが発生するまで会社は存続される。
1. SPACの経営陣は、興味ある企業を見つけてIPOで調達した資金で買収しその企業を上場させる。
2. SPACが締め切り時(通常2年)まで、既存の企業を買収または合併できなければ、清算が行われ、投資家は資金を回収する。
従って、投資家は資金がどのように使用されるかを知らずに資金を出資するということから「白地小切手会社(blank check company)」とも呼ばれている。
SPACに投資する理由は?
企業は、直接上場や逆合併(既存の上場企業を買収した後、合併)などいくつかの方法で上場する。
最も一般的なプロセスは伝統的なIPOで、投資家向けに複数回の投資説明会を開催したり、財務諸表に対して厳しく調査されるなど面倒なプロセスがある。逆合併はIPOに比べて上場するための長いプロセスが省略できる。
SPACには、以前の経営や財務データがないので、成果は経営陣の評判に依存する。投資説明会をしないため、SPACのIPOも、一般的に早く完了できる。
米国のベンチャー投資家のChamath PalihapitiyaやヘッジファンドマネージャーのBill Ackmanが最も有名なSPAC経営者である。PalihapitiyaのSocial Capital Hedosophia Holdingsは、2019年にイギリスの宇宙飛行会社ヴァージン・ギャラクティック(Virgin Galactic)の株式49%を取得したことで有名である。Bill AckmanのPershing Square Tontine Holdingsは、2020年7月に資本金40億ドルを調達したことで、今までで最大のSPACになった。
ただの流行りなのか?
SPACは1990年代から様々な形で存在しており、一般的に中小企業が上場する最終手段として利用されていた。
しかし今回のパンデミックは、一部の企業に簡単な方法で資金を調達し、迅速に上場する方法を検討させた。
コロナ禍と米国大統領選挙は、世界の市場に多大な不確実性を生じました。このような時期に、伝統的な方法で資金調達した企業は苦しみました。SPACは資本が不足している企業が必要な資金を調達する適当な方法でした。
レフィニティブのデータによると、2020年10月まで、全世界SPAC IPOに560億ドルが集まった。2015年の同期間、全世界的に調達された資本の約12倍になる。
コロナ禍が落ち着いても、SPACの流行りが継続するかは予測できない。
流行を遅らせるいくつかの要因がある。投資心理の冷却、ターゲット企業の拒否、伝統的な方法での資本調達が再び人気を得ることなどがある。また、規制措置の否定的な影響もある。