アメ株クラブ

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【ADBE】アドビ 企業分析

Adobeロゴ2017-今

 

ワードで作成した文書等を固定化させるプログラムとしてアクロバットAcrobat)を使用している人は多い。PDFファイルという電子文書の形である。アクロバットはコンピュータの普及と併せて一般的に使用されるようになったが、電子文書の重要性と保管機能の進化に伴い、より広く使用されるような状況である。

 

ほとんどの人は文章を読むたびにダウンロードせざるを得ないアクロバットには慣れている。会社のロゴを見ると慣れているかもしれないが、このソフトウェアを作ったアドビという会社には馴染みがない人もいる。しかし、アドビ(Adobe)は私たちの生活の中に入っており、今後もこのソフトウェアへの依存度はさらに増えるということである。

Adobeは、ナスダック100を構成している企業の9番目に位置しており、それなりに比重が大きいハイテク企業である。過去1年の株価の動きを見ると、2020年4月3日293.61ドルを底にして、9月2日533.80ドルを粘性に450ドルから500ドル台で、過去6ヶ月間の株価が横ばいしている状況である。

アドビの株価の動きが他の企業とはいくつかの他の様相を見せているのは、新型コロナ以前からAdobeAcrobatやその他のソフトウェアが広く普及していたため、ニューノーマル時代のテーマ株にはなれなりからである。

アドビを分析する中で、現在のビジネスモデルと併せて、今後は同社の事業戦略と方向がさらに重要になるしかない理由でもある。

 

会社概要:誰もが使用している電子文書Acrobatプロバイダ

アドビ(Adobe)という社名の語源は、スペイン語で泥で作られたレンガみたいな建築資材を意味すると知られている。社名としてはジョン・ワーノックの実家の裏にある川の名前だそうだ。アドビは1982年に設立され、カリフォルニア州サンノゼに本社があり、法人登録はデラウェア州でされている。米国のデラウェア州法人税など企業環境が良いことから、多くの米国企業が法人本籍地として使っている。

設立初期には、グラフィックと写真、イラスト、アニメーション、モーションピクチャーなど、様々なコンテンツの制作・出版するために特化したソフトウェアを提供する会社としてスタートしている。その後、デジタルマーケティングのソフトウェアとして発展させ、PhotoshopPhotoshop)ソフトウェア、Adobe Illustratorなどのイラスト分野に拡張した。それ以降は、電子文書とPortable Document Format(PDF)までビジネス領域を広げて、視聴覚コンテンツの制作・編集・出版するまで幅広くソフトウェアを提供する会社に成長した。

アドビは1980年代にデスクトップ出版革命を導いたと言っても過言ではないほどマルチメディア制作・編集・出版のためのさまざまなツールを開発しており、いくつかのソフトウェアをパッケージ化してAdobe Creative Suiteサブスクリプションモデルで顧客に提供している。また、様々なソフトウェアを使用して文書を保管できるようAdobe Creative Cloudという名称のクラウドサービスも提供している。

創立初期のアドビ

アメリカの創業ストーリーの中で創業者の倉庫から会社が始まった物語は珍しくない。アドビも創業者ジョン・ワーノック(John Warnock)の自宅倉庫でから始まった。

1982年ゼロックスパーク(Xerox PARC)で勤務をしていたジョン・ワーノックとチャールズ・ゲシキ(Charles Geschke)はゼロックスを辞めて、Post Script(PS)page description language(PDL:コンピュータのページ記述言語)を開発するために事業を始めた。

アップルのスティーブ・ジョブズSteve Jobs)は、アドビが設立された年に500万ドルで会社の買収を提案した。二人の創業者は最初は断ったがアドビの初期投資家たちがスティーブ・ジョブズの提案を検討することを強く勧めた。最終的に創業初年度に会社の株式19%をアップルに売却した。スティーブ・ジョブズはアドビに会社価値の5倍の価格を提案してくれた。この契約のおかげでシリコンバレー初の創業初年度に黒字を出した会社になった。

ジョン・ワーノックとチャールズ・ゲシキは様々なビジネスアイデアを考案し、オフィス出力システムとコピー用のソフトウェア開発に取込んだ。その中でプリンティングソフトウェアとポストスクリプト言語を開発するビジネスに重点を置くようになった。

ポストスクリプト(Post Script:PS)は、コンピュータ上で各文書のページを出力する際に​​適切な形式を備えるようにするコマンド言語である。アドビが開発したポストスクリプトは、国際規格に合う最初のコンピュータプリンティング言語になり、そのアルゴリズムを利用して英語以外にも適用されるようになった。

1987年にはアドビのポストスクリプトが業界の基準に準拠する規格のプリンタ言語となり、400社以上のソフトウェアで使われるようになり、プリンタメーカー19社とライセンス契約を締結した。

1980年半ばにはアップルのマッキントッシュのためにイラストレーターのプログラムをリリースした。そのベースになる技術は、既存のフォント開発ソフトウェアで、このイラストレーターが市場に出始めてアドビのポストスクリプトが搭載されたレーザープリンタが流行りだした。

1989年にはアドビの代表製品となったマッキントッシュのグラフィック編集プログラムであるフォトショップPhotoshop)を発売してまもなく市場を先取りした。

1993年にはPDFを市場にリリースし、Adobe Acrobatリーダー(Adobe Acrobat and Reader)をリリースすることになった。現在PDFは、国際規格認証(ISO 32000-1:2008)を受けた電子文書フォーマットとして全世界で使用されている。

アドビの買収合併の歴史

アドビは過去何回か企業買収を行った。1992年にはOCRシステムズ(OCR Systems)を買収し、1994年にはアルダス(Aldus Corporation)を買収した。

アルダスは、デスクトップパブリッシングソフトウェア(desktop publishing:DTP)会社でページメーカー(PageMaker)を開発した会社として知られている。会社名アルダース15世紀ヴェネツィアの印刷業者であり画家であったアルダーズマヌーティーウス(Aldus Manutius)に由来したという。
Adobeは2003年に新トリルリウムソフトウェア(Syntrillium Software)から編集マルチトラックレコーディングソフトウェアであるCool Edit Proを165万ドルで買収して名称をAdobe Auditionの(Adobe audition)に変更し、2005年年には最大のライバル会社であったマクロメディアMacromedia)を34億ドルに株式スワップの形で買収した。

2009年には、オンラインマーケティング分析会社であるオムニまい(Omniture)を18億ドルで買収して、既存のオムニまい(Omniture)製品をアドビのマーケティングクラウドAdobe Marketing Cloud)に統合させた。

2011年にはノートルダムデックス(DemDex)という聴衆最適(Audience-Optimization)ソフトウェア会社を買収した。

2013年と2014年には、セキュリティの欠陥に起因するハッキング事件が発生して精神がなかったAdobeは2018年に入って再びマーケティング関連事業に焦点を合わせながら買収に力を送る始める。

2018年5月にマプレゼント(Magento)と呼ばれるe-コマースサービスプロバイダを16億8000万ドルで買収したマプレゼントは市場データの分析、広告やマーケティング関連サービスを提供する企業である。

また、同年2018年にマキト(Marketo)と呼ばれるマーケティング自動化ソフトウェア(Marketing Automation Software)会社を買収し、翌2019年には、アレゴリージュミク(Allegorithmic)という3Dテクスチャ(Texturing)の会社を、そして2020年11月には15億ドルの費用を支払って、ワークフロント(Workfront)と呼ばれるマーケティングコラボレーションソフトウェア(Marketing collaboration software)会社を買収する。

 

ビジネスモデルと企業ビジョン

ビジネスモデルとAdobeが提供するサービス

アドビはマイクロソフトが提供するマイクロソフトオフィス(Microsoft Office)のように、加入者ベース(Subscription)をベースにしたビジネスモデルを持っている。項目別売上構成をみると、2020年度は売上高の90%がサブスクの売上になっており、急速に成長している。

サブスク加入者の売上に基づくビジネスモデルであるため、同社で考える最も重要視する事業指標はARR(Annualized Recurring Revenue:年間経常収益)である。つまり、毎年決まって発生する収益、売上はどのくらいかを注視している。Adobeは、クリエイティブクラウドCreative Cloud)とアドビドキュメント(Adobe Document)の成長が良くてARRが増加し続ける見込みである。

会社がサブスク加入者の売上は2つある。一つはクラウドをベースにしたもので、もう一つは、ライセンス(license)をベースにしたものである。クラウドもライセンスも売上はその契約期間に分けて発生し、通常契約期間は1ヶ月から36ヶ月の間になる。

このように、契約期間に分けて売上を計上しているため、計上されていない売上が受注残として残るようになる。Adobeはペナルティを払わずにキャンセル可能な契約を除く受注残の金額を公開しており、2021年第1四半期基準で63億8000万ドルの受注残が残っていると発表した。

サブスクの売上詳細を項目別にみると、デジタルメディア、デジタル体験(Digital Experience)とパブリッシング(Publishing)に細分化され、デジタルメディアが全体の加入者の売上高の75.8%、デジタル体験が22.9%であり、パブリッシングと広告が1.3%の売上になっている。地域別では2020年度基準で米州が58%、欧州と中東地域が26%、アジア太平洋地域が16%の売上を構成している。

A)デジタルメディア(Digital Media)

デジタルメディアはクリエイティブクラウドCreative Cloud)とAcrobatおよびAdobeドキュメントクラウドAcrobatAdobe Document Cloud)に分けられる。

a)クリエイティブクラウドCreative Cloud

クリエイティブクラウドに属する製品は、アドビフォトショップAdobe Photoshop)、イラストレーター(Illustrator)、フレスコ(Fresco)、Adobe InDesignの(Adobe InDesign)などがある。この製品群は様々な形で提供されているが、特にモバイル部門での成長率は100%を超えている。

この事業部門のユーザ構成を見ると、一つのアプリのみ使用するユーザが3分の1であり、すべてのアプリを使用しているユーザが3分の2程度になっている。一つのアプリのみ使用する割合がそれなりにいるのは、新規ユーザが増えているためである。その後徐々に他のアプリも利用するようになってすべてのアプリを使用しているユーザに転換されていること意味する。

市場規模としては、2022年で310億ドル、2023年には410億ドルになると見込んでいる。その中で、200億ドルがプロフェッショナルユーザで、150億ドルがコミュニケーター、そして残り6億ドルぐらいを一般コンシューマーになると予想している。

クリエイティブ関連の職業群が増えている傾向で、3DやARなど新たなデザイン領域が増加しており、成長性は維持できるとみている。

b)AcrobatおよびAdobeドキュメントクラウド

これに該当する製品はアドビ・アクロバットAdobe Acrobat)とアドビ・スキャン(Adobe Scan)及びアドビ・サイン(Adobe Sign)などがある。まだAcrobat事業部門の成長率は3年連続で20%を超えており、75%以上の新規加入者がAcrobatを初めて使用する人である。そのため、この事業部門のARRも安定的に成長している。

また、サブスクへ継続的に切り替えが行われていることが確認できる。サブスクの売上が2017年から2020年までで2倍以上の成長している。2022年基準でドキュメントクラウド市場は130億ドル規模になるとみられ、2023年には210億ドルの市場まで年間61.5%の成長が期待されている。

B)デジタル体験クラウド(Digital Experience Cloud)

デジタル体験クラウドは、広告及び広告関連分析やマーケティングに関するソリューションを提供するクラウドプラットフォームである。このプラットフォーム事業は大きく、データとインサイト(Data&Insight)、コンテンツとコマース(Content&Commerce)は、顧客管理と広告(Customer Journey Management and Advertising)に分類される。

Adobeは様々な製品を提供している。Adobe Experience Platformは、顧客の様々な情報をリアルタイムで標準化し顧客プロフィールを作成してくれるプラットフォームである。

このように、顧客情報を標準化して連携されている他のアプリケーションに提供してくれる。また、オープンアーキテクチャ(open architecture)でAdobeMicrosoft、SAPなどと連動可能で、Query service、Data science serviceなどで分析することでより詳細な顧客管理が可能になる。 

これによって提供されるのがAdobe Analytics分析資料で、ウェブ、ソーシャル、モバイルなどから受信した顧客情報を分析し、予測モデリング(predictive modeling)と顧客性向分析ができる。そして、このような情報を管理するためのプラットフォームがAdobe Audience Managerである。

これらの顧客情報管理ソフトウェアに加えて、Adobe TargetはAIを使用し顧客がコンテンツをデジタルマーケティングチャネルから配信することを手伝ってくれる。コンテンツをテストし、必要に応じてターゲッティングしてくれるエンジンを提供している。

このようなサービスで最終的に提供するのがAdvertising Cloudになる。ユーザーはより個人にあった広告を配信して、より正確なブランドマーケティングを行うことができ、広告戦略を最適化することができるようになる。

アドビが提供するサービスとプラットフォームがその内容と種類が膨大であるため、初めての顧客や企業の立場では、サービスの概念が難しいこともあり、そのような顧客にはコンサルティングサービスを提供している。このコンサルティングサービスを通じて、顧客に合ったソリューションを設計し実行することを手伝っている。

アドビが予想している2023年基準デジタル体験クラウドの市場規模は850億ドルでCustomer Date&Insights部門が260億ドル、Content&Commerce部門が440億ドルとCustomer Journey Management部門が150億ドル規模になると予想している。

アドビ自体は2018年会計年度から2020年度の2年間の売上高は16億ドルから27億ドルで68.8%増加した。その中でCustomer Journey Management部門の割合が増え、Date&Insights部門の割合は減っている。

アドビのコスト構造

アドビのようなソフトウェア事業では、研究開発(R&D)と営業・マーケティング費用(Sales&Marketing)が相対的な関係で高くなる。2020年度基準でアドビのコスト構造は、研究開発費用が売上の17%、営業・マーケティングが28%を占めている。

 

業界分析及び競争企業

電子文書市場とクラウドプラットフォーム市場

アドビに対する市場評価は非常に楽観的で、今後数年間は年間15%以上の成長率を達成できると期待している。理由としては、Adobeが予測している2023年基準でCreative CloudAdobe Document CloudとAdobe Experience Cloud市場の全体規模が1470億ドル規模になる。その中で、アドビは業界首位企業であるにも関わらず、シェア率は10%に満たしていない。今後のアドビの事業戦略に合わせてシェア率を伸ばせる余地は十分ある。主な根拠は以下の通り。

① 従来の単体ソフトウェア(Single product software)会社からクラウドベースのSaaSビジネス会社へ上手く移行できた企業である。

② 独自で開発したAIエンジン「Sensei」を他の製品と組み合わせることで今後も製品価値が高くなる可能性がある。

③ コンテンツとコマース(Content&Commerce)事業部門をさらに強化して、従来の企業顧客にますます急速に浸透している。

④ Adobe Document cloudの成長が加速しており、新規ビジネス群に属する電子署名分野の場合はマイクロソフトのプログラムにデフォルト機能として埋め込まれている。

⑤ SaaS(Software as a Service)ビジネスとして、Adobeのサービスを複数デバイスからアクセスできるようになり、顧客満足度が高まっている。

アドビの競合他社

アドビは製品群が多いため、いくつかの分野の企業と競争しています。電子文書と電子署名部門でのアドビの最大のライバルはドキュサイン(DocuSign Inc:DOCU)で、電子署名分野で72%の市場シェアを持っている。一方、CRM(Client Relationship Management)ソフトウェア部門では、セールスフォース(Salesforce.com Inc:CRM)やSAPと競合している。2019年基準でCRM業界での市場シェアは、セールスフォースはが18.3%で2位のSAPの2倍以上のシェアを持っており、アドビは4.8%で業界4位である。

 

アドビのバリュエーション

2021年6月4日の終値基準でAdobeの株価は504.50ドルでPERは43.92倍で取引されている。市場に上場して最も近似の競合会社であるドキュサインに比べるとアドビのバリュエーションは合理的に見える。CRM業界の競争相手であるセールスフォースは50.07倍で、SAPは25.32倍に取引されている。

考えてみれば、アドビは創業してからの歴史が40年近く及ぶ伝統のある会社なのに、企業のビジネスモデルがかなり未来志向である。また、今後も会社の成長の可能性も高く、業界も発展し続ける業種というのは大きい。ほとんどのSaasプラットフォーム企業がまだ利益を出せない会社が多い中で、アドビの高い収益性は強みである。

 

 

参考:Investor Relations | Adobe

 

 

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